法律相談(遺言・成年後見)
遺言書について
人が亡くなられて相続が開始された場合、財産は法律で決められた割合で相続人の間で平等に分けられます。法定相続分は、画一的に定められているものであって実情を反映されていないので、親の手助けをした相続人と、財産を食いつぶした相続人を平等に扱いたくないという感情的な問題がある場合もあります。このような感情がある場合は遺言書を作成しておけば、自分の意思を反映した財産の継承が可能になります。遺言書を作成することで、自分の意思を反映した財産の継承ができること以外にも、相続人間での紛争を未然に防ぐ事ができますので、この点もメリットです。相続を契機としてお互いに不信感を持ち、兄弟や親族間の間がギクシャクすることが多いので、遺言書を残すことはスムーズな相続を進めるにあたって極めて重要だと言えます。
相続の説明は相続の法律相談のページを参照ください。
遺言書に書けること
遺言書に書ける内容は法律で定められたものに限られます。決められたこと以外を遺言書に書いても効力は生じませんが、その遺言書全部が無効になることはありません。その部分のみが無効になります。
一般的に遺言できる事項は、民法、商法、信託法等の法律上可能とされているもの(認知、未成年後見人の指定・未成年後見監督人の指定、遺贈の減殺割合の指定、遺産分割の禁止、遺贈、相続人の廃除及び廃除の取消、財団法人設立のための寄付行為、相続分の指定とその委託、特別受益の持戻し免除、遺産分割方法の指定・指定の委託、相続人相互間の担保責任の指定、遺言執行者の指定・指定の委託、祖先の祭祀主催者の指定、生命保険金の受取人の変更、信託の設定など)になります。
遺言書の種類
遺言には、大きく分けて普通方式と特別方式と呼ばれるものの2つがあります。特別方式の遺言は、遺言者が危篤状態、船舶で航行中といった特別な場合の遺言です。普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種類があり、秘密証書遺言はあまり使われません。
遺言【自筆証書遺言】
一番簡単に作成できる遺言で、遺言者本人が自筆で書いて、押印するだけで作成できます。しかし、簡単に作成できるので偽造、隠匿の可能性がありますので保管場所には十分な注意が必要です。さらに、形式不備などの理由により残したはずの遺言が無効となる危険もあります。このような問題は現実に発生しております。安全な保管場所としては銀行の貸金庫などがあります。
自筆証書遺言がある場合、相続開始後に遺言書を家庭裁判所に提出し検認の手続きを受けなければなりません。
遺言【公正証書遺言】
公正証書遺言は、公証役場において公証人が口述筆記で作成する遺言書で最も信用力がある遺言書と言えます。作成した遺言書は公証役場の金庫に保管されるので偽造変造、隠匿の心配がありません。無効になる危険性が低い反面、証人が2人以上必要となるため、一般の人が証人となった場合に状況的には遺言の存在や内容が外部に漏れることがないとは言い切れません。また、病気・怪我などの理由で公証役場に行くことが難しい場合は、公証人に出張してもらうことも可能です。
公正証書遺言がある場合、相続開始の際に家庭裁判所の検認は必要ありません。
遺言【秘密証書遺言】
秘密証書遺言は遺言書の内容や存在を秘密にしたい場合に向いている遺言書です。遺言者が署名押印した遺言書を封筒に入れて封印した上で、公証役場で公証人に提出し、証人2人以上の立ち会いのもとで自分の意思である遺言であることを申し立て、公証人が日付と遺言者の申述内容を封筒に記載して、公証人と証人が署名捺印することで成立します。遺言書は遺言者に返却されるので、公証役場には封筒の控えのみ保管されます。
秘密証書遺言がある場合、相続開始後に遺言書を家庭裁判所に提出し検認の手続きを受けなければなりません。
遺言【死亡危急時遺言】
危急時遺言とは、病気や事故で死期が迫り署名押印できない遺言者が口頭で遺言をし、証人(3人以上)の立ち合いのもと、その1人に遺言の趣旨を口授し、それを書面化する遺言の方式です。口述し、筆記した証人がその全文を遺言者及び他の証人に読み聞かせ、各証人が筆記の内容が正確であることを承認し、署名捺印します。死亡危急時遺言は、遺言作成日から20日以内に家庭裁判所で確認を受ける必要があります。また、作成後に遺言者が回復して、自筆証書遺言や公正証書遺言などを作成できるようになり6ヶ月間生存したときは、その危急時遺言の効力がなくなってしまいます。
遺言(こんなことはございませんか)
- 自分の死をきっかけに残された家族が揉めて欲しくない。
- 財産を食いつぶした子供に遺産を渡したくない。
- 子がいないので遺産はすべて配偶者に相続させたい。
- 再婚した妻と前妻の子供たちがうまくいっていないので相続が心配だ。
- 相続人ではないが息子の妻には負担を掛けたので相続させたい。
- 未認知の子供に相続させたい。
- 内縁関係のままだが相続をさせたい。
- 相続人以外で相続させたい人がいる。
- 生前贈与ですでに差が付いている。
- 会社がうまく継承できるように相続を考えたい。
- 未成年の相続人がいる。
- 財産が土地などの不動産に偏っている。
- 遺産を寄付したいと考えている。
- 財産が、不動産、預貯金、株券、事業など幅広い。
成年後見制度
全ての人は、年齢を重ねれば判断能力が衰えていくものです。年齢による判断能力の低下だけではなく病気や怪我によって断能力が低下することもあります。判断能力が低下した場合、財産を勝手に処分されることや、必要で適切な医療を受けることができないなどの不利益を受けることが出てきてしまいますが、判断能力が不十分になった人の権利を守る制度として成年後見制度があります。成年後見制度は財産管理や身上監護を行う人を選任する制度です。
成年後見制度の概要
知的障害や精神障害、認知症などにより判断能力が不十分になってしまった人の権利を守り、支援してくれる人をつける制度です。成年後見制度を利用すると、判断能力の不十分な人は財産管理と身上監護等を受ける事ができます。また、支援している人と支援できる内容などの事柄が登記されますので、支援する人の成年後見人としての地位が公的に証明されます。成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度の2つに分かれ、違いの1つには制度利用時の判断能力の状態があります。法定後見制度は、判断能力が不十分な方が利用できます。判断能力の区別に応じて後見、保佐、補助の3種類に分けられます。本人、配偶者、四親等内の親族等法律で定められた申立権者が家庭裁判所に成年後見開始の申立てを行い、家庭裁判所の判断で適任と思われる成年後見人を選任します。成年後見人には、配偶者や子供などの親族が選任されるのが実情ですが、弁護士などの専門家が選任される場合もあります。
任意後見制度の場合
任意後見制度は将来の能力低下に備えてあらかじめ自ら選んだ任意後見人を準備しておく予約と言えるものなので、契約時には本人の判断能力が必要になります。任意後見制度は本人と任意後見人の間で自由に契約内容を定めることができます。手続きは公証役場へ行き、成年後見制度の契約を締結して公正証書を作成します。
成年後見(こんなことはございませんか)
- 任意後見人を探している。
- 兄弟が父親の後見人になっているが、財産を使い込んでいるようだ。
- 配偶者に後見人を付けておきたいが、自分は高齢で自信がない。
- 子供がいないので、今のうちから任意後見契約を結び将来に備えたい。
- 親族や知人に財産が狙わられるのではないかと心配だ。